相変わらず妻の調子は芳しくない。こんな過酷な状況でも冬は容赦なく迫り来る。
もうだいぶ寒くなってきていて、夕方以降は必ず、特に寒い日には午前中から暖房をつけなくては寒すぎて風邪ばかり引きそうだ。そんなわけで妻がいつも過ごすリビングの暖房を強化することを考えていた。
それもあって、先日来持っている機材などのうち、絶対必要というわけではないものを処分して少しでも資金を捻出しようと考えていたのだが、前々回の投稿で触れた型遅れの機材を売ってからというもの、もう全部処分してもいいや、という気分になってきて、片っぱしから機材の接続を外し、綺麗に梱包などしていた。それと同時進行でリビング用のオイルヒーターを注文した。去年私のエアコンがない仕事部屋があまりにも寒すぎてオイルヒーターを買ったところ、なかなかよかったので、リビングもエアコンとオイルヒーターを併用しようと考えたのだ。
片っぱしから梱包した機材の中には、去年私が売ろうとした時に妻が“がしっ”とつかんで売ることをどうしても拒んだあのネコの絵が描いてある機材も含まれていた。私は妻の調子が悪く何にもほとんど分からなくなっていることをいいことに、このネコ機材も含めて全部売って、暖房増強と合わせて、信販会社からの借り入れの大部分を返済してしまおうと考えて一人でやる気に燃えていた。信販会社からの借り入れを返済したら、その分貯蓄などに回せるようになるので、かなり家計も楽になるぞ、妻もきっとそのほうが良いに違いない、と一人で勝手に考えていた。
そこへ、たまたま昨晩夜中2時ごろに妻が正気に戻ったように話ができる状態になった。私はこれはチャンスだと思い「ネコ機材も売るよ。そうして貯金できるように頑張るよ」と言ってみたところ、妻は「ううん」と言う。「売った方がいいよ。貯金できたらまた買えばいいから。ネコの機材」と言ってみたのだが、やはり「ううん」という。
・・・。
ダメなのか?やはり今年も売ったらダメなのか?
仕方がないので、一旦保留してその時は眠った。
次の日の朝、妻がお風呂のお湯を抜いたり、テキパキと何やら片付けていたので、まだ調子がいいな、と思いもう一度言ってみた。
「あのネコ機材を売って、借り入れを返済して貯金するよ」
「ううん」
「・・・。」
この瞬間、ここ数日一人やる気に燃えていた私の努力は全てなかったことになってしまった。貯蓄を増やす夢が、儚くも消え去ってしまった。少なくともかなり遠のいた。
もうこうなったらしょうがない。現実的な計画を練りなおそうということで、今日は無難な機材を売るように手配し直した。ネコ機材は、実は多くの機材からなるシステムの一部で、ネコ機材を確保するということはそれに関連する機材群が売れないということなのだ。そうすると完全に借り入れの大部分などは返済できないので、せめて今回の冬支度でマイナスが出ない程度の機材などを売ることにした。
このように、うちではこんな風に大変な病気になって、多くの時間意思疎通すらできない妻の意見が、これまでも、今も、そしてこれからも多分ずっと、絶大かつ絶対なのだ・・・。
今はまた妻は調子が悪くなってしまい、話は通じない。歌って踊りながらもやはり天敵と戦っているらしく、攻撃を次々と繰り出している。
「アローレイン!」「天使の矢!」「千切りっ!」「十文字斬りっ!」「必殺、杏仁豆腐斬りっっ!」「必殺、フライドチキン当てっ!!」
こんな感じだ。ちょっと前のように泣き叫び、「しねー!」とか絶叫するわけではないのでいいのだが、アローレインはゲームのサガシリーズの技、天使の矢はドラクエの技だからいいとして、千切りは料理だろう。必殺、杏仁豆腐斬りって、何だ?フライドチキン当てって・・・。投げつけるのだろうか?フライドチキンを。まあ、クリスマスらしくはあるが。
何はともあれ、しっかりと戦えているようなので、応援してやりたい。
コメント
はじめまして。
ブログの全文を読んだわけではないです。
過去に可能性を検討していたのなら
申し訳ありません。
抗NMDA受容体脳炎という病気をご存知でしょうか?
統一失調症状を引き起こす病気ですが
治る可能性が高い病気です。
「猫機材」という言葉をそのまま使っているとしたら、
単純に「猫」という単語に反応している可能性も…。
私自身が、昔飼っていて訳あって離れ離れになった子の名前とか、犬種で苦しくなる時があるので…。
似ている雑貨とかは買っちゃいますけど☆
機材に書いてある猫の絵だけを複写して、飾れないでしょうかね。
「あの猫ちゃん、機材から出てきたみたいよー」とか。
それで満足すれば………売れます!!(笑)
Kiraraさん
こんばんは。面白いアイデア、ありがとうございます。Kiraraさんも飼っていらしたんですね。離れ離れになると、後から思い出したりして苦しくなりますよね。妻も「ネコ」という言葉に反応している可能性は大きいです。しかしもう一つあったネコの機材の方はすんなりと売れたので、あの件のネコ機材には特別な思い入れがある恐れがあって、おいそれともう手を出せない気分です。もうこうなったら壊れるまで、いや、壊れても博物館のごとく飾っておくしかないかもしれません。。。とはいえ、あのネコが機材から出てきたら喜ぶかもしれないので、絵だけ複写してあげるのは良さそうです。それ、やってみます。
Segakariさん
はじめまして。コメントいただきありがとうございました。
返信遅くなりまして済みません。「抗NMDA受容体脳炎」という病気は初めて聞いたので、色々ネットで調べたり映像を見て見たりしました。妻の症状とは違うようですが、これはかなり大変な病気ですね。意思とは関係なく体が動くような症状で、しかもそれが継続するということで、非常に辛そうです。妻の場合は、激昂・興奮などしつつ膝から下や頭などをこすることはあるものの、自らの意思でやっているようで、またどちらかというと次々と頭に浮かんでくる妄想、幻覚と戦っている感じです。