カーテンを閉め切った暗い室内で、今日も妻はブツブツと独り言を言っている。昨夜も睡眠はしていない。
しかし時折笑い声も混ざりながらの内容なので雰囲気は重くはない。カレンダーに記入する内容でいうなら、××(-)が調子が非常に悪く、かつネガティブな状態だとしたら、今日は××(+)だろうか。調子がめちゃめちゃ悪いのに明るい。独り言の内容は、どうもトライアスロンに各大学が出場していて、その実況をしているようだ。「**大学〜、一位になりました。□□大学、遅れました。おめでとうございます」などと言いながら拍手をしている。
食事に関しては、相変わらずほとんど食べないのだが、傾向があるので書いておきたい。
まず、パン、ウィンナーとキノコ入りスープ、コーヒー、フルーツ(みかんやバナナ)をテーブルに置くと、肉類だけは食べたりする。そしてコーヒーを飲み、私がいくらパンやフルーツを指差して「食べろ食べろ」と言っても一瞬パンなどに手は伸ばすものの、その手は結局コーヒーに向かってしまう。
今日は、どうしてもフルーツを食べさせたかったので、試しにみかんの皮を剥いて、食べやすいサイズにしてから渡してみた。すると、みかんを食べた。なのでもう一個皮を剥いて、それも食べさせてみた。そのあと、バナナの皮を剥いてあげて、半分自分で食べながら「食べろ」と言って渡すと、そのバナナも食べて、残りの皮を渡してきた。その後、「おやつだよ」と言いながらコーヒーと板チョコを枕元に持っていき、私もベッド脇のドレッサーのいすに座りながら、チョコレートをパキパキ割って、かけらを手渡すと、チョコレートも食べた。この間、妻はずっと独り言を続けていて「キアヌ・リーブスは、、、社長かあ」などと言いつつ爆笑しながらあわやコーヒーをこぼしそうになりながら食べていた。
見た所、このように手渡してもらって食べるのが嬉しいようにも見える。妻の病気は、感情のコントロールができないようだ。というか、プラスの感情もマイナスの感情も極端に振れるようなので、少しでも嬉しいと大爆笑などに繋がるのだと思う。
ここまでやっても、どうしても朝食のパンは食べなかった。仕方ないので、スープと妻の中間に置いてあったためにべちょべちょに濡れたパンは私があとで食べたのだが、今度からはスープとパンの位置関係に注意したい。スープは近くに、パンは遠くに、だ。そうでないとこぼれたスープでパンがべちょべちょに濡れて美味しくない。
今日で××状態が7日目だ。長い。明後日はクリスマス・イブ。調子の良い状態で迎えられるかが気がかりだ。
ところで、巷で噂になっていた『逃げるは恥だが役にたつ』というテレビ番組を最終回だけ観てみた。主人公の男女が、約束事を色々決めて、共同生活を送るうちに、いつしか本当に大事な人になっていた、というような話だろうか。主人公の周囲でも、上の年齢層のカップル誕生や、トランスジェンダーのカップル誕生、そして子供づれの幸せそうな夫婦などが出てきた。女性の方の主人公も、小賢しいと言われるような欠点かと思っていた部分が別の場所では評価されるなど、最終回だからか、色々とハッピーなハプニングの連続だった。
こういうのを観ていると、いかに我が家が普通でないか、ということを思い知らされる。妻との間で何事かを取り決めるなどと言った理知的な会話はもちろん不可能だし、子供もいない。妻の病気の症状がどこかで評価されるなんていうことももちろんない。食べたあとは、口の周りが汚れているので、ティシューで拭いてあげなくてはならない。
ドラマを観ていると、もちろん(最終回しか観ていないくせに)感動もしたし、よかったな、と思えたのだが、すぐに現実に引き戻されて、我が家の実態に愕然とする。
それでも、今、この状態が不幸かと考えた時に、必ずしもそうではないような気がするのだ。もちろん、妻と理知的な会話ができたらいいなとか、子供がいればな、と思うこともあるのだが、脳や精神が壊れたような状態で、幼児のようになりながらも、一生懸命生きていて、目が覚めると時折、幼児状態のくせに私の頭を撫でたりしているような、そういう優しさもあり、状態の良い時には誕生日カードやクリスマスのカードなどをくれる。こんなことを書きながら、涙が溢れてくるということはやはり幸せではないということか。。。いつか毎日笑って過ごせる日がくるだろうか。
こんな状態であるとはいえ、いつか妻が本当に良くなるその日まで、支え続けるのは夫の役割、責任だと思うので、頑張っていこうと思う。
コメント
そんなあなたに感謝します。
私も、統合失調症の当事者で、子供もいませんが、主人に支えられた一人です。
陰性症状が酷いときには、主人が私の好物のウインナーを焼き、ホットケーキを焼き、食べさせてくれました。
その時の主人とschizoさんが重なって、こんな葛藤があったのだろうと、涙がでます。
料理もできず、寝ているしかなかった私ですが、
現在は、アルバイトもできるようになりました。
今は、主人と二人、小さな幸せを大切に楽しく暮らしております。
奥様のご快復を心から祈っています。
はじめまして。ブログの内容を参考にさせてもらっている者です。
私は妹が軽度精神遅滞、適応障害(時々統合失調症に似た症状)があり両親がいないため姉の私がサポートしています。
葛藤の多い毎日ですが時は必ず流れて安堵する日が訪れるのも真実です。
schizoさん の優しさや知的さが奥様を支えていて読んでて励みと慰めになります。
どうかご慈愛しながら少しだけ耐え、また奥様の癒しに触れられますように。
こんにちは。
うちの娘も何にもできないでたまに不穏になる状態で、一般の家庭・親子とは大きく違いますが、私も自分が不幸せかと思うとそうではないような気がします。
色んな形の生活がありますよね。
それが一般の枠にはまらなくても結構楽しい気持ちにもなれるんですよね。
私もたまに現実を直視するとき「うちってなんて不幸なんだろう。」と思ってしまうこともありますが、実は本当の不幸ではないのかもしれません。
一生懸命ピュアに生きている娘と一緒に居られるんですもの。
奥様、少しずついくなっていかれるといいですね。
うちも一進一退ですが、娘が回復することをを楽しみに生きています。
こんにちは。
うちの娘も何にもできないでたまに不穏になる状態で、一般の家庭・親子とは大きく違いますが、私も自分が不幸せかと思うとそうではないような気がします。
色んな形の生活がありますよね。
それが一般の枠にはまらなくても結構楽しい気持ちにもなれるんですよね。
私もたまに現実を直視するとき「うちってなんて不幸なんだろう。」と思ってしまうこともありますが、実は本当の不幸ではないのかもしれません。
一生懸命ピュアに生きている娘と一緒に居られるんですもの。
奥様、少しずついくなっていかれるといいですね。
うちも一進一退ですが、娘が回復することをを楽しみに、一緒に楽しく生活していきたいと思います。
二つダブってしまいました。
スミマセン(汗)
アップルさん
コメントありがとうございます。
とても優しい素晴らしい旦那さんですね。アップルさんご自身も良くなられて、今は旦那さんとお幸せに暮らしておられるとのこと。嬉しく思います。とてもいいことを聞いた気がします。うちの妻は今日もまだまだ妄想真っ只中で、何も先が見えませんが、少しでも楽しく暮らせるよう頑張ります。
あちゃこさん
コメントありがとうございます。
妹さんのサポートをされているとのこと。大変かと思いますが、頑張ってください。葛藤、多いですよね。安堵する日が来ることも知っていながらも、日々振り回されて一喜一憂してしまう毎日ですが、明るい未来が来ることを信じて、私も頑張りたいと思います。
以前から時々ブログを読ませていただいています。なかなかコメントする勇気がありませんでしたが、コメントに励まされる、とあったので、思い切ってコメントしてみます。本当に私こそ、ブログにいつも励まされているのです。先が見えないことはつらいこともありますが、このブログ、記録そのものが重なっていくことが、価値ある生活だと思います。気を落とさずに、力を抜いて、罪の意識を感じないで、暮らしていってほしいと願っています。
私の母は統合失調症ではありませんが、ヒステリックな人で、小さい頃は自分は不幸だと思っていました。私も30代後半になり、いまはそうは思っていません。晴れの日もあれば、嵐の日もある、とわかるようになりました。
母は一人暮らしをしていますが、父を除いては私しかいないので、どうしても私にも悩みがありますが、なかなかまわりに理解してもらえそうな人がいません。母自身が自分は統合失調症かも、、と言っていた時期もありましたが、本人はもう忘れていると思います(私は違うと考えています)。母は時々暴言が止まらなくなるので両親にも勘当されましたが、私から見たら、幼児のような無邪気な人に見えるのです。こんな小さなささいなことでこんな笑顔ができる人もいないなあとも思います。父もそれはわかりながらも20年同居していたら父が壊れそうになったので、いまは別居しながら長らく経済的精神的支援を与えています。80代の祖父母が勘当したことは、私にはショックではありましたが、私がなんとか愛さなきゃというきっかけにはなりました。相変わらずヒステリーは変わりませんが、母には楽しく暮らしてほしいと願いながらも、私にできることを探しています。そんなまま、母が年を取って体調が悪くなってきたので少し心配です。
こちらのブログに励まされながら、日々を過ごしているものがいることをお伝えしたく、書きました。また来ますね!
みうさん
思い切ってコメントくださりありがとうございます。
とても嬉しく思います。みうさんのように言ってくださる方がいると、こんななかなか上手く行っているとは言えないボロボロな記録ブログでも書いていて良かったと思えます。妻との大切な記録なので、これからもぼちぼちと、気を落とさず、力を抜きつつ、頑張って、そして書いていきたいと思います。とても暖かいコメントをいただき、力が湧きました。みうさんは、お母様がまさかの勘当、そしてそれを支え続けるお父様の間で、子供の頃から苦労されたのだと思います。でもいろんなことを冷静に、客観的に捉えておられて、すごいなと思います。そういう人だからこそ、無邪気かつヒステリックなお母様、そしてそれを支えるお父様にとっての支えになるのだと思います。上手く言えませんが、どこか遠く離れたところでも、こうしてブログやコメントを通じて、頑張っている人、励みになっていると言ってくれる人がいる、ということを知るだけで、温かい気持ちになることができるので、コメントをくださって、私にとっても大変励みになりました。こうして家族や見ず知らずの人同士でも、支え合って、生きて行けているような気がします。お母様も、お父様も、それからみうさんにとっても、楽しい日がこれからたくさん来るといいですね。このブログにもまた遊びに来て下さい。
miaさん
お返事遅れてしまいすみません。
「一生懸命生きている娘と一緒に居られるんですもの。」という一文を読んで、本当にその通りだなと思いました。病気であっても、普通に話が通じない状態であっても、本当に正直で、ピュアで、一生懸命生きようとしています。そんな姿を見ていると、なんとかして回復する一助になりたい、と思い返すことができます。ついつい日常の大変さ、過酷さに潰れてしまいそうになりがちですが、私も妻の回復を楽しみに生きて行きたいと思います。娘さんの回復をお祈りします。