妻の統合失調症が再発してから、もうじき丸8年を迎える。
発症当初は、パニック状態だったり、対応に必死だったりで、とても「介護する側のストレス対処法」など考える余裕がなかったのだが、特に最近は介護や世話の質を上げるためにも、また自分自身の健康のためにも”いかにして介護ストレスを減らすか”をいうことが一つの大きなテーマに自分の中でなってきている。
それというのもここ数年、介護施設等での入所者に対するひどい扱いが問題になるケースが増えてきて、そのひどい扱いの背後にある原因について考えることが増えてきたということがある。
もう一つは、繰り返し訪れることがわかりきっている妻の「調子の悪い時期」に対して上手に対処したいと思うようになってきたからだ。再発当初から数年のうちは妻の調子が良くなると「もう治るんじゃないか?」などと浮かれまくり、調子が悪くなると逆にこの世の地獄だぐらいに思って、気持ちが地中深くめり込むというまるでジェットコースターのような精神状態を私自身繰り返していたのだが、さすがにそろそろこの生活も8年になるというのに、いつまでもそれでは学習能力のないバカのようだ。それに何より身がもたない。
そんなわけで、この一大テーマ”いかにして介護ストレスを減らすか”を考えているのだが、今のところやっているのはだいたい次の通りだ。
1 ストレス原因を遠ざける
2 ストレスの発生源を断つ
3 楽しめることをする
1の「ストレスの原因を遠ざける」というのは、文字どおり“物理的に”遠ざけるのだ。といっても妻が自発的に遠ざかってくれるわけではないので、正確には自分自身が隣の部屋など、少し離れたところに行って、扉を閉め、密閉式ヘッドフォンをするなど、視覚的な物も聴覚的な物も、そして妻が何かを叩いたりした時に発生する衝撃波なども全部遠ざける。
こんなことを書くと「介護をしなければならない責任ある立場にあるのにけしからん!」というお叱りの言葉が聞こえてきそうだ。しかし、このストレス要因を、とにかく何が何でも、遠ざけないとこちらの身が危ないのだ。一度始まったら36時間以上ぶっ続けで続く妻の怒り、叫び声、泣き声、そして扉という扉、窓という窓をそこらじゅうで「バーン!!!」「ガーン!!!」とやりながら、時々何かが壊れる音がする環境は、例えて言うなら身の回りで銃弾や爆弾が飛び交い、地雷が吹き飛ぶ戦場のようなものだと思う。
本当にこれらのストレスの原因をシャットアウトしないと、こちらの精神がおそらく持たない。ただ、ここまでやっても完全にはシャットアウトできず、またたまにこちらから様子を見にいくので、責任放棄のようなことにはならない。
2の「ストレスの発生源を断つ」というのは・・・、
こ、これは・・・。
恐ろしすぎて、ここでは書けない。
というのは冗談で、要するに「妻がなるべく調子が悪い状態にならないよう心がける」ということだ。妻の場合は、どうもやはりストレスが幻聴、幻覚、妄想の原因になっているようなので、なるべく全てのストレスから妻が解放されるようにしている。
例えば、妻が調子の良い時に作った通販の注文書を見て私が「予算をオーバーしている」と言ったりとか、私ばかり、料理、配膳、皿洗い、料理、配膳、皿洗い、そして、料理、配膳、皿洗い、というふうにやっていて、疲れた時に「なんで少しも手伝ってくれないんだ」と言ったりとか。もっと言うと、暑いとか、寒いとか、喉が渇いたとか、もう全てのことが妻にとっては妄想の引き金になる。なので、私はできるだけ妻にストレスをかけないようにし、さらには妻の好きなグッズを並べたりあげたりして、ハッピーな気分にさせようと努力しているところだ。
もしかすると、こうしていると甘やかせ過ぎで、妻が逆にダメに成ってしまうのでは、という心配もなくはないが、おそらく妻は本来は自分自身を律するタイプなので、少なくとも治療中はこの対応で大丈夫なのだと思う。
3の「楽しめることをする」というのは、文字どおり自分が楽しいと思える活動を積極的にやるということだ。
何も介護中に遊ぶなんて不謹慎な!!!なんてことはないと思うので、明日の介護のための英気を養う意味でも、どんどんやっていきたいと思う。
以上、大きく3種類に分けて書いてみたが、要は介護する側が大きなストレスにさらされて疲弊していては、とても質の高い介護などできない、ということだと思うので、これらに限らず、たとえ介護する立場にあっても人生を充実させてくれるのもがあれば、積極的に取り入れていきたいと思う。
話は変わるが、先日私がふと「うちには子供がいないな」と思って、一日中ため息をついて家の中で過ごしていた時に、妻に「うちには子供が何でいないんだ?」とため息をつきながら質問してみたところ、妻が自分自身を指差した。
どうも「ここにいるじゃない、子供は。私、わたし」とでも言っているようだ。無言だが。
これにはあっけにとられて、笑ってしまい、それ以上ため息をつく気が無くなった。
コメント
香菜子です、精神疾患・統合失調症の家族のお世話をする上でいつも参考にさせて頂いています。今回の内容もとても勉強になりました。私にとっては2つ目が少し難しいかもしれません。精神疾患・統合失調症の私の家族は、食器の片付け方や冷蔵庫の中の食材の置き方、日用品の配置などに異常にこだわります。少しでも気に入らないところがあると、
怒り出したり騒ぎ出したり、物を投げることもあります。もしかしたら、統合失調症以外の精神疾患、人格障害やパーソナリティ障害、もあるのかもしれません。私も素直に家族のこだわりに従えば良いのですが、頑固で強情、強気で攻撃的な性格もあってついつい強く反論してしまいます。反省しなきゃと感じています。私も3つの点を心がけて精神疾患・統合失調症の家族に前向きに取り組もうと思います。奥様の状態が少しでも改善されることを願っています。香菜子
香菜子さん
コメントありがとうございます。
私の妻も独自のルールが沢山あります。例えば食卓の自分の席の届く場所に「朝」「昼」「夜」という自作のカードを置き、食卓で食べる場合は必ず該当のカードを表にします。その他のカードはひっくり返して裏にします。鍋などの置き場所も、私が置いていた場所からわざわざ毎回同じ場所に移動してあったり。この病気の一つの特徴かもしれませんね。私の場合は、妻のカードはそのまま置いておきますが、鍋はまた私の好きな場所にこっそり移動させたりしています。その一つ一つがちょっとした駆け引きのように感じたりします。こんな些細な駆け引きみたいなことも、やりようによっては、妻の病気の回復にとって良い影響があったりしないかと思いつつ、日々迷いながらですがやっているところです。
香菜子さんのご家族も良い方に向かわれるといいですね。がんばりましょう!
いつもお疲れ様です。
私も最近、介護する側が通常の生活をして、充実した日々を過ごす事が大切だと気付かされ頑張っている最中でした。しかしどうしても病気の本人を1人家に置いておくことが出来ません。なにをするか分からないし、私自身不安で…。となるとどこかに出かける事も出来ず、充実からは程遠い日々です。うちも8年目になります。私も馬鹿みたいに振り回されてます。ただいまこの世の終わりの様な地獄の日々の真っ只中です。
愛さん
コメントありがとうございます。
病気の本人を一人にしておくのが不安だという気持ち、よくわかります。
私も妻に、過去には子供用の居場所が検索できる携帯をもたせていましたし、今もiPhoneをもたせて、常に居場所がわかるようにしていないと不安です。実際に迷子になったことも多数。家の中にいたとしても、火をつけて後始末ができなかったらどうしようとか、何かで怪我でもしたら、と思うと不安になりますよね。私の場合は、妻の行動、特徴を観察して、そーっと物陰から見ていたら大体行動パターンがつかめて、妻がフラフラと出て行ってしまうのもどういう場合かもわかってきましたので、その中でできる範囲で私一人で行動する機会も持てるようにだんだんとしていきました。
ただ人それぞれ、特徴はバラバラだと思いますので、愛さんの妹さんの様子を見ながら、愛さんご自身も何か気晴らしなどできるようになるといいですね。家の中で愛さんがプラベートをある程度保てるように環境を作るというのもいいかもしれません。頑張ってください。