妻の使っている通販会社は、たまにキャンペーンでお酒の割引券や無料引換券を送ってくる。妻はそういうプレゼントとか、割引とか、無料でなんちゃら、というのがものすごく好きなようで、普段から家に届く無料の新聞や、雑誌、通販のカタログの同梱広告などから、せっせと無料券やサービス券を切り取っては並べているのだが、このお酒サービス券も私のところに持ってきた。
前回までは、サントリーだけがビール割引券を送ってきていたが、今回からなんとそれにアサヒとサッポロが参戦した模様で、お酒サービス券がどっさり届いた。サントリーは前回同様の「ビール割引券」四本分。アサヒとサッポロはサービス券同梱は後発だからか、無料券だ。アサヒは一本。サッポロはなんと太っ腹の四本だ。いずれも発泡酒だが。
それでも妻はそわそわと嬉しそうで、私が「じゃあ今日はお酒もらって帰ってくるからな」と買い物の出がけにいうと、「うん」と一言。
話はそれるが、この「うん」という一言が、発病前と、今、この闘病中では全然違う。発音というか、声の調子がまるで別人だ。発病前の妻の返事は「うん(ニコッ)」という感じで、高めの小さい声だった。可愛らしい感じだ。私はそれが妻の体が小さいせいかと思っていたが、どうも違うようだ。なぜなら、今の体の大きさも変わっておらず、太ってもいないのに、今の発音は「うん(がさっ)」という感じで、ハスキーかつ幾分低音混じりなのだ。今の方が素の状態なのだと思う。ただ、その「うん(がさっ)」の中に、私がお酒を持って帰ることへの強い期待を感じるので、これはこれでアリだと思う。別の意味で面白い。
お酒を買って戻ると、妻はごそごそと買い物袋からビールなどを取り出し、冷蔵庫へ入れた。そして、調子の良い日限定だが、夜ご飯の後にビールや発泡酒350ml缶一本とグラス2個、それとおつまみを出して持ってくる。相当、好きなようだ。すぐ真っ赤になるので、基本アルコールには弱いのだが。
ただ、お酒をこうしてたまに飲むようになってから、妻の調子が大崩れしていない。まあ前回の大崩れが2月17日なので、そんなに日にちも経っていないのだが、22日くらいからのお酒があった一週間、妻は時折調子を崩しそうになるものの、大崩れせずに持ち直してくる。お酒の効能か、それとも単に楽しみなことがあるというところが良い方に作用しているのか。そこはまだわからない。
ところで、妻は、お酒を私がグラスに注いであげると、乾杯のためにグラスを差し出し(無言)、そしていつも踊らせているネコのぬいぐるみを胸に抱いて、一生懸命飲んでいる。私もお酒には強くないので、350ml缶を二人で分けるから量は少ないが、妻は飲むのにかなりの時間がかかる。お酒を少し飲み、おつまみをちょこっと食べ、またちょこっと飲む。そして時折抱いているネコのぬいぐるみの顔を見て、いろんなポーズをとらせては、無言でネコぬいぐるみと遊んでいる。ネコが両手を口に当てて「プププ」と笑っているような仕草や、左右に体を揺らし楽しんでいるような感じなど、いろんなポーズをさせている。
私は、妻がこうしてぬいぐるみで遊んでいる姿や、その他、一生懸命折り紙をしているところ、ぬりえ、ノート書きなどをしている姿を見ていると、なんと純粋な精神の持ち主なのだろうと思うことがある。私が見ていようと見ていまいと、妻のやることは変わらない。ただただそうやって、純粋に自分の心の中で作った世界の中で遊んでいるのだ。
今の闘病生活が、精神の再構築の過程であるとするならば、私の役目は、この妻の純粋な時間をたくさん持てるよう、環境づくりをすることなのだろうと思う。頑張ろう。
コメント
うらやましいです(*゚-゚
わたしは、エビリファイなどを飲んでいるのでお酒は飲めなくなったのですよ(><) 素敵な時間を過ごせて、良かったですね。
お酒、飲めなくなってしまったんですね。。。薬と合わさると良くないですもんね。残念です。
エビリファイは妻も服用していました。副作用が少なめということで、妻にとっては今のところ、あれが最後の向精神薬です。退院後に服用していましたが、おそらくは入院中の悪性症候群とそれへの対処のための薬の影響で、ついに末期的副作用が出てしまい、今に至ります。ちなみにその対処のための薬はダントリウムというものでした。
今は妻は向精神薬を使っていないので、事あるごとにちびちびとお酒を飲んでいます。
いつかさちこさんもお酒を普通にのめるようになるといいですね。その時を私も待っています。
なんだかほっこりあたたかいひと時という感じですね!
自分の中の世界で人形遊びを楽しんでいても、言葉はなくても、
グラスを2個出したり、乾杯をしたり、
奥様は schizo さんと晩酌のひと時を楽しみたいと思っているように感じられて
読んでいるだけであたたかい気持ちになりました(^^)
ありがとうございます。
こんにちは!
記事をぜんぶ読みました。
ふと思ったのですが、奥様はお母さんに「色気づくのはいやらしい」と教育されたのでは無いでしょうか?
私の母がそういう所があり、子供の時に、胸が大きくなるのを、いやらしいと言われたり、私が女らしくなるのを憎む感じでした。なので、しばらくは、自分の中の女として男に感じる感
情は悪い物だという意識が抜けませんでした。
もしかしたら奥様はそういう気持ちを押さえつけて、試験勉強などをしなくてはいけなかったのかなと思いました。
ぽち さん
コメントありがとうございます。
妻の調子の悪い時は、妄想だか幻覚の相手との喧嘩に夢中で、ほとんど私は妻にとっていないも同然のようですが、調子の良い時に、私のこともちゃんといるように扱ってくれるので、どうにかこうにか(気持ち的にも)やっていけてるような気がします。
ここ最近、調子を崩していたのですが、昨日、今日あたりからまた、穏やかな生活が戻ってきています。
ほっこり感ですね。そういうタイミングをたくさん持てるよう、頑張ります。
ともこ さん
コメントありがとうございます。
このブログを読んでいただきありがとうございました。
妻の発病前の話を思い出すと、母親、そしてその味方である妹から、常にいじめられていた、と言っていました。
母親と妹がリビングで楽しくくつろいでいる間、私の妻だけが皿洗いをさせられ、母親と妹が「私たちシンデレラの意地悪母と姉妹みたいね~」などと言いながら笑っていた、とか、気づくと妻の母親が、妻の背中に包丁を構えて立っていた、とか、帰りが遅くなった夜に、冷めた風呂で、追い炊きも許されずに冷たいまま湯船に浸かったとか。
今でも、母親の携帯宛にメールは送っていますが、宛先は弟と猫で、妹の存在はまるで妻の中には無いようです。
色気付くのがいやらしい、という教育があったかどうかは不明なのですが、常に存在をありのままに認められることなく、高学歴をつけるよう、最高学府の中でもトップの学校へ行くようプレッシャーをかけられていたことは聞いていますので、息苦しい生活を送っていたことは間違いないようです。
お返事ありがとうございます。そうなんですね。女性が嫌いなのはお母様と妹さんの事があったからですかね。男女の絡みのシーンに怒るとあったので気になりました。ブログ、とても心に響きます。奥様が元気になるように影ながら応援してます。奥様の怒りの対象は何なのでしょうね。大変だと思いますがお身体に気を付けて下さい。更新楽しみにしてます。
ともこさん
コメントを書いた後、またあれこれ妻が発病前に言っていたことを思い出していました。確かに「恋愛がらみ」のドラマや本などからは遠ざけられていたようです。そういうトレンディドラマのような、男女の恋愛ものに関しては、見ることを禁止されていたようです。ただ、これは妻の母親がサスペンスが好きで、それを観たいがための、単なるテレビ独占のための恋愛もの禁止だったのかもしれませんが。詳細は分かりません。
妻の怒りの対象は、やはり過去に嫌な目に遭わされた女性たちのようです。それは小学校やそれ以前から、大人になるまで。本当にたくさんの女性の名前が出てきます。
様々な理由により、妻はずっといじめの対象だったようです。
長くなりそうなので、またよく考えてから、投稿してみたいと思います。
お気遣い、ありがとうございます。
先日は貴重なアドバイスを頂きありがとうございました。奥様のようにお酒が好きとかそういう楽しみがあるのはうらやましいです。私の家族はそういった楽しみや趣味も持っていないので、ただただ被害妄想で周りに当たり散らしたり突然泣き出したりする状況です。昔から人間関係を上手に作ることが出来ないようで、友人はおろか家族や親戚とさえ上手く付き合えなかったようです。それが統合失調症という病気のせいなのかもともとの性格のせいないのかはわかりません。私自身も性格がきついと周囲に言われて嫌われたりすることも多く、人間関係に悩むことが多いのですが…。ともかく楽しみや趣味を持って前向きに過ごすことが大切ですよね。香菜子
香菜子さん
ほっとできる瞬間が持ちにくい、というのはなかなか厳しい状況ですね。ご家族も含め、季節のイベントでもいいし、何かの楽しみ、趣味、好きな食べ物、何でもいいので、楽しい時間を持てるよう、願っています。
丁寧なお返事ありがとうございます(^人^)
薬の副作用は怖いですもんね。
薬に関する知識がすごいと感じました。
奥様のために色々勉強されたのですね(*´ー`*)
いいこと、わるいことが波のように襲ってくる感覚は、わたしもわかります。
それに立ち向かう勇気、素晴らしいと思います。
これからも、ブログのぞかせて下さいね。
同じ病気の方との交流の場として、とても重宝していますし、奥様を大事にされているところなんかは気持ちがほっこりします。
またの更新を心待ちにしております。
紹介
桜鍾青年隊
全生庵
言霊百神