(2011年9月以降)
運び入れた荷物の荷解きと配置もあらかた片付き、新しい住処での生活が始まった。
妻は相変わらずソファに寝そべって、荷解きを手伝ってはくれなかったが、とくに急ぐ必要もなかったのでぼちぼち片付けた。たまにホームセンターなどに必要なカラーボックスや電灯などを買いに出かけたが、ホームセンターで運送用の軽トラックを借りると、妻がなかなか乗ってくれず、やっと乗せると助手席から平手で私の頭をポコポコ叩きながら「誘拐~!!」「助けて~!!」などと暴れるのには参ったが、どうせ家に着いたらおとなしくなることはわかっていたので、結構叩かれて痛かったが、気にせず進めた。
これは不思議なことだが、ホームセンターまでおとなしくついてきて、ホームセンターでも独り言は言うもののおとなしいのに、クルマに乗せようとすると暴れるのだ。何かクルマにいやな思い出でもあるのかもしれない。それとも私の運転が恐いのか?へたくそだと思われているのか?
妻は一度家に入ってしまってからは、やはり自分の見慣れた家具があったからか、すっかり新しい住処が気に入ったようだ。実家に居たときにはあれほど嫌がって、朝から勝手に家から出て行こうとしていたのが、新しい住処に来てからは、出て行こうとしなくなった。おかげで、毎日外食生活から開放された。お財布にもやさしい。
普段の妻は、相変わらずサイン波のように、数時間~数日ごとに調子の良い悪いを繰り返し、良いときには多少は話が通じるが、悪いときには叫んで泣き喚いて・・・、というパターンを繰り返した。
それでも、実家に居たときよりも明らかにストレスは少なくなったようで、比較的穏やかに過ごせる日が増え、病院に行ったときにも、医師が変化に少し驚くほどに、妻は穏やかな面を見せるようになった。
とはいえ、程度の問題で、まだまだ調子の悪いときのほうが多かったし、私のことは忘れたままで、“なにかと世話をしてくれる親切な人”という扱いだったので、おおよそ普通の家庭とは程遠かったが。
そんなわけで、前に住んでいた家を引き払ってから半年振りに、すこし落ち着いて生活できる状況になった。