(2010年12月)
市役所に相談に行った。とにかく収入の見通しが立っていないのに、高い税金の請求書が来るので困っていたのだ。事情を話せば、少なくとも支払猶予くらいにはなるのではないか?そう思っていた。
市役所で、まず健康保険税担当の方に「支払い金額が高すぎて今後は今までどおり払えそうにないのですが、どうしたらいいですか?」と尋ねてみた。隣では妻が自分の世界に入り込んで派手に笑っている。大爆笑していると言ってもいいぐらいだった。すごく大音量なので市役所のロビーで目だっている。
係の方はとても親身に話を聞いてくれ、現在退職しているという状況から健康保険税を再計算してくれた。なんと8分の1の金額に下がった!二人で、たったこれだけ・・・。
これには本当に驚いた。サラリーマン時代にはいかに高額の健康保険税を払っていたのかということだ。実はこの健康保険税はかなりサラリーマン時代も家計を圧迫していたので、なんだか金額が下がりまくって拍子抜けした。しかし、現実的に考えると、妻を抱え、今後払っていけるであろうぎりぎりの金額だった。
この過程で、我が家の通帳からなにから、全部まる裸になった。そして近い将来本当にまずい状態になるであろうことを理解いただけたようだった。
健康保険税担当の方は、その上、私と妻の現状から、「生活保護申請レベルですので、検討してみますか?」と尋ねてきた。私は、自分自身は健康だし、まだ頑張れるのではないか?と自分で思っていた。それで生活保護は最後の最後にとっておこうと思って、「まだ頑張ってみます」と言って断った。
ただ、当時住んでいたマンションの家賃が12万円だったので、そこは処分するよう勧められた。そしてその方は、国民年金課で相談することを勧めてくれたので、次に国民年金課に行ってみた。
すると国民年金課の方々も、非常に親切で、妻の国民年金は法定免除されるうえ、私自身の国民年金も一時免除する仕組みがあること、そして妻の場合は年金がもらえるかもしれないことを教えてくれた。障害基礎年金というものだ。これには、妻の病歴をさかのぼったり、病院に書類を書いてもらう必要があるので、多少時間を要するようだったが、ともかくも一通り手続き方法を教えてもらった。
次に福祉課に行くように勧められた。妻のような病気を持った人に対して、いろいろな行政サービスがあるとので相談したら良い、ということだった。
福祉課に行くと、隣で妻は依然として何事かをつぶやきながら大爆笑していたが、私は担当の方に「うるさくてすみません」などと言いつつ、現状をお話してみた。
すると、妻のような病気で苦しんでいる人のために、特別障害手当という国の制度があること、障害手帳を持つとバスに乗る時など優遇されること、などなどいろいろな行政サービスを教えてくれた。
いずれも、医師の診断書や必要書類に記入する必要などがあり、時間はかかるようだったが、一通り書類をいただき、手続き方法も教えてもらった。どこの係の人も本当に親切だ。神様かと思った。
この後、税務課に足を運んだ。
税務課の人もとても親切で、個室に通され、事情をいろいろと聞かれたが、最終的には大っぴらに税金を免除したりする制度はないものの、払えない人は事情を申告すれば、税金の請求書自体は送付され続けるが、払わないでいても事情が事情なので、市役所が何か差し押さえなどの強制行為をすることはないし、そのうち税金自体が時効になるので、安心するように言われた。
こういうことを公開の文書に書いてしまっていいのか、若干戸惑いはあるが、私と似たような境遇で本当に困っていて、下手したら自殺するしかない、なんていう人がこれを読んで助かるなら、それはそれでよいと思う。
私も市役所では、通帳も何もかも全部見せて、本当にやばい、この人絶対破産する、というのが、誰の目にも明らかなほど情報を開示して、やっとこのような取り計らいを受けたと思うので、悪用などはできないと思うし、無理に偽装するなどしても虚しいだろう。それこそ犯罪だし。
市役所を後にし、早速当時通っていたクリニック、妻が過去お世話になった病院数箇所に連絡し、必要書類に記入いただいた。いろいろやりとりする必要はあったが、過去の病院もちゃんとカルテを保存してくれていたようで、一応市役所での手続きは終わった。
あとは行政の判断を待つばかりとなったが、こちらでもなんとか次の住処を安めの家賃で探すなど、いろいろすべきことがまだまだあった。