⑤会社を退職

(2010年8月末)

ついに退職することにした。

当時の直属の上司にまず伝えた。とてもいい人で、いわゆるコワモテなのだが、実はいろいろ気を回すことのできる部下思いの方だった。いろいろ相談に乗ってくれたが、事情を話し承諾してもらった。同じ部内の先輩や同僚にも伝えた。当時の部の雰囲気はとても良く、つくづく最後に所属した部があれでよかったと思う。みんなには本当にこれからも頑張ってほしいし、成功を祈っている。

次に人事に伝え、事務をお願いした。当時の人事部長も、人事担当も社内プロジェクトなどで一緒に仕事をさせてもらったり、妻の病気のケアまでふくめ、いろいろお世話になった人たちだ。いろいろ面倒もかけてしまったが。

転職をしていたので、その会社にいたのは約3年半だったが、多くの仕事を経験したし、たくさんの人と出会った。今でも世話になったことを懐かしく思い出す人もいれば、あまりにも醜悪で思い出すのもトラウマな人もいるが、ともかく3年半、その時はほぼ人生の大部分のように思えた場所だった。実際の社会人経験は、もっとずっと長いし、他にも数社に勤めたが、ことこの病気とのかかわりという点ではこの会社が一番思い出深い。

日本の会社では良くあることだが、その会社でも当然のように残業があった。
妻は、不安症なところがあり、夜10時とか11時を過ぎるとよく会社に電話してきていた。そして上司や人事と喧嘩をはじめるのだ。もちろん私が出ることもあるが、それでは飽き足らず、上司や人事に「早く返してください」という。これは何度も何度もあった。最初は11時過ぎたら電話、というパターンだったが、会社に対する妻の怒りが増すにつれ、10時、9時、8時と早まっていった。しまいには5時過ぎると妻から電話がかかってくるようになってしまった。このせいで、人事の人や数人の上司には個人的にいやな思いもさせてしまったかもしれないが、今思うに、やはり度を過ぎた残業というのは、人間の生活としてはどうかと思う。

話は多少それるが、たとえばヨーロッパなどでは、夕方4時~5時くらいから労働者が仕事を終え、街中のオープンカフェでコーヒーやお酒を飲んでのんびりしている。もちろん土日は殆どすべてのお店が休業している。どちらが人間らしい生活だろうか?私には今の日本の労働環境は、とてもではないが人間らしいとは言えないと思うのだが。どうだろう?言っていることはおかしいだろうか?

今思うと、当時の経済状況といえば、日本ではバブル崩壊以降、経済はほとんど立ち直ったとは言いがたく、失われた10年とも20年とも言われ、企業は内部留保など増やしたかもしれないが、個人レベルでは年収はどんどん下がっているような時代。リーマンショック以降、受注も激減し、さらにヨーロッパの経済危機のあおりで先行きに分厚い暗雲が立ち込めている・・・。

そんな中で、企業も社員もギスギスしがちで、部下を蹴落とそうとする上司や、同僚を馬鹿にし、いじめて楽しむ輩、足の引っ張り合い、次は誰を辞めさせようかと手ぐすねを引いている上層部など。ちょっと人間ができていないと、ああいう時代にはすぐに人間は堕落する。

違うでしょうに。部下とは目をかけ育て協力しつつ共に成功を目指す相手、同僚は同士、社員はコストではなく資産。

中には確かにすばらしい人もいた。そんな人たちには、本当に今後も厳しい時代だけれども頑張ってほしい。

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