③入院先とは別のクリニックへ

(10年7月中旬)

退院してからしばらくは、だいぶ体力は落ちていたものの、入院前の平和だった生活が戻ってきたかのようだった。ただ入院前までと違い、かなり薬は増えていた。このとき出ていた薬は、ジプレキサ、ダントリウム、マイスリー、だったと思う。

退院した病院の医師に「退院後、状況が悪化したらどうしたらよいですか?」と聞いたところ、「勝手に退院するんだから好きにされればよろしいんじゃないですか?」と言われ、縁が切れていた。

下手に再発したら恐いので、二人で話し合って、規定の量をきっちりと飲んでいた。病院と縁が切れ、不安もあったので、どこか別の病院を探そうと妻と話し、電話をかけまくって退院の翌日に診ていただけるというところがあったので、クリニックだったが、そこに決めた。新しい医師には、それまでの経緯や悪性症候群の件も伝え、善処いただけるということで安心した。

それからは、週に2日、妻は入院中に痛めたトウコツ神経麻痺のリハビリに通い、私は朝から会社に行く、という生活をしていた。

ところが数日経ったある日、私の携帯に聞き慣れない病院から連絡が入り、「恐らく奥さんかと思われる人がうちの病院にいらっしゃって、話が通じませんので迎えに来てください」とのこと。

あぁ、再発が来てしまったか・・・、と思いながらバスに乗って迎えに行くと、確かにそこに誰とも話が通じていない妻が数人のスタッフに囲まれていた。その日は連れて帰り、しばらくして話が通じるようになったときに、事の顛末を話したが、妻は「大丈夫。またリハビリに行くから」と言っていたので、また次の日も同じように会社に行った。

するとまたもや、今度は交番から電話が。「奥さんがおかしな格好で歩いていたので保護しました。迎えに来てください」と。迎えにいくと、パジャマの上に何か羽織って更に2枚バスタオルを巻いた妻が座っていた。まだ真夏なので、暑いのだが、バスタオルをぐるぐる巻きにしていた。

もうこうなると、放っておくと危ないので、会社に事情を伝え、次の日からは様子を見るため自宅待機に。

そんな時、家の中で妻の様子がどうも変なので、見ると、手を硬く握り、両目が上に行って白目になって「うううぅ」と唸っていた。その後すぐにベットの上で硬直しながらバッタンバッタンと痙攣を始め、かなり長い間ベッドの上で跳ねていたと思う。私は必死に抱きかかえながら声をかけていた。それから妻は泡を吹きながら、唇が真紫になって、パタッと動きが止まった。

「死んだ、死んでしまった・・・」

一瞬そう思った。

そしたら、程なくして大きないびきをかき始め、昏睡状態になったので、気を取り直して、妻の口を拭いてやり、新しく行き始めたクリニックに急いで当日予約を入れた。

診察まで数時間、余裕があったのでその時飲んでいた薬と副作用を調べたところ、どうもダントリウムという薬の副作用ではないかと疑い始めた。副作用の欄に“癲癇”とあったからだ。ダントリウムは、妻が悪性症候群になったので、それを緩和するために出された薬だった。妻はダントリウムを飲みながらも、更に向精神薬であるジプレキサも飲んでいたのだが、それらの副作用が出てしまったのだと思う。

クリニックに着くと、主治医がこんどは大量に癲癇の薬をくれた。そしてその癲癇の薬を受け取るために、薬局の椅子に妻と座っていたら、またしても癲癇が妻を襲った。

妻はその場で唸りながら、ついさっきと同じようにバッタンバッタン激しくのたうちながら、椅子から転がり落ち、泡を吹きながら気を失った。そして、1回目と同じように、しばらくしたら大きないびきをかきながら昏睡状態になった。

さすがに1日に2回も同じ状況になると、慌てこそしなかったが、もうこれはやばいな、と思った。

薬局の方が良い人で、車椅子を貸してくださったが、途中妻が車椅子に胃の中のものを戻してしまった。そうして戻し終えた後、妻が「これじゃ死んじゃう」と一言いった。まったくそのとおりとしか言い様がない状態だった。車椅子は洗ってお返しした。

新しいクリニックへは、2週間に1度通ったし、そのたびに大量に向精神薬と癲癇の薬を頂いたが、妻も薬を恐がるし、どうも大量投与のような感じなので、医師には「飲ませようとは思ってますが、まだたくさん余っていてなかなか減りません」と言い続けていた。

向精神薬の副作用で悪性症候群になり、悪性症候群を止めるためのダントリウムで癲癇になり、今度は癲癇を止めるために癲癇に効く薬を・・・∞?

いったいどこまで続くんだろう、と不安になると同時に、医療のあり方についてかなり疑問を感じた。

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